高速音感法


プロの国家試験に向けての、モールス習得のヒント

アマチュアの国家試験では、分速25字という亀よりも遅いモールスの
試験に格下げされ、実質ノーコード試験のようなものですが、

↑後記 とうとうアマチュアは完全ノーコード(実技試験なし)に格下げになりました。
プロの試験(1〜3総通、国内電信特)には未だにモールスがしっかり存在しています。

資格によって違いますが、1,2総通のモールスの試験は、
分速100字の欧文普通語
分速80字の欧文暗語
分速75字の和文普通語
 それぞれ各5分の送信、受信の試験があり、
アマチュアのそれとは、比べ物にならないほど高度なレベルです。
↑後記 とうとうアマチュアは完全ノーコード(実技試験なし)に格下げになりました。
送信については、エレキーの持込受験ができますので、
最大の難関は受信でしょう。

モールスの試験に合格するためには、まずは符号を覚えなくては始まりません。

この符号の覚え方にもいろいろあり、
伊藤 路上歩行 ハーモニカ・・・ の語呂合わせで覚える、合調法と呼ばれるもの
単語カードに・− ・−・− −・・・ と書いて 点と線で覚える方法
これを トツ− トツ−トツ− ツ−トトト と声に出して覚える方法
どれもお勧めしません!

ここでお勧めするのは、音感法と呼ばれるもので、
しかも高速度での符号暗記を強くお勧め致します。

どういうものかといいますと、
国家試験に合格することを目標に設定すると、
分速
130〜150字の速さでいきなり符号を覚えてしまう
というもので、符号が覚え終われば、即130〜150字の速度のモールスが
受信できてしまうというものです。

この方法は、上記の合調法、点と線の方法(既存の方法)で符号を覚え、
分速20字とか40字とかの遅い速度から、徐々に速度を上げて
最終目標の130〜150字に到達するのに比べ、遥かに短い時間で到達できます。
 アマチュア用に25字を合格したレベルの方、なまじっか60字くらいなら受信できるけれど、
それ以上に速度が伸びない方等も、一度ゼロにもどって、この方法(高速音感法)で
やり直したほうが、トータルのかかる時間は少なくなることでしょう。

これら既存の方法が伸び悩むには、正当な理由があります。
 音を聞いてから、点と線を思い出し、記憶されている符号表と照らしあわせ
ようやく文字が出てくる。
 また合調法では語呂合わせをしてからでないと、文字が出てこない。
いずれも高速度には対応できず、訓練によってこれらの脳内処理にかかる時間を
短縮していかなければなりません。

短縮していく過程、すなわち速度を徐々に上げていく過程で「プラトー」という現象に
かならず遭遇します。 これは体を使って習得するものにはかならず存在し、
ある一定のレベルから なかなか伸びない、逆に成績が落ちている。
と言う現象で、これを乗り越えなければ次のステップ(ここでは速度)に進めません。
モールスの習得においては、25→100字程度に上達するまでに、数回のプラトー
に引っかかることでしょう。

多くの先人達は、このプラトーを乗り越え、モールスの試験に合格してきました。
しかし、同時に多くの挫折者も生まれています。

この高速音感法では、プラトーを超えた130〜150字という目標の速度で符号を
覚えますので、目標までにプラトーに遭遇することが殆ど無い! というのが習得まで
短時間で達成できる最大の理由です。

また、速度も速すぎるのでは?と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし取れるのです!。 この速度の符号を聞いてみてください。
短点だか長点だかを聞き分けできれば取れるのです。
 だって肉体では判別↑できているのですから・・・。
  脳内で文字に変換が追いついていないだけ。




さて具体的には、どのような方法で習得するのでしょうか

まずは、ベクター等からモールスの練習ソフトを頂いてきてください。
 あまりに沢山ありすぎて迷ってしまいますが、高速音感法で使用できるソフトの条件は、
1、自分の作成したテキストからモールス符号を発声してくれること。
2、テキスト文章の 文字と文字の間にスペースを2つ3つ分空けた場合
  そのとおりにきちんと2つ3つ分スペースが空いてくれること。
3、速度は130〜150字(PARISという速度単位)で発声できること。
この3点が使えれば、どんなソフトでもかまいません。
 
お勧めとしてはCW2WAV http://hp.vector.co.jp/authors/VA029289/ham.html 


次に 符号暗記の為の原稿を作ってください
 ア     ア     ア     ア     ア     ア ・・・・・・・・
ポイントは 「ア」の後にスペースを10〜20個くらい空けてください。
※これは、学者ファンズワースによっても証明されていることで、
モールス習得に置き換えると、けして符号が早いから取れないのではなく、
次から次へと符号が送られてくるから、取れないのである。
という理論にも当てはまります。

 ※面白い実験があります。 符号を覚えたてで25文字くらいなら受信できる人に
分速200字くらいの高速モールスを聞かせます。
 なんと!受信できるんですよ! (
:ただし1文字だけ送った場合ですがネ。)
 それを(同一文字)を少なくとも10〜20回は連続で聞けるようにします。
隙間をあけて、他の文字も同様に原稿を作ります。
5文字の暗記する文字を書入れたら、 その5文字をランダムに並べた文を書入れます。
 もちろん文字と文字の間隔は広く(スペース10個程度)空けます。
 言葉を覚えていく過程の乳幼児に話しかけることを思い出してください。
ゆ〜っくり話しますね!? でもこれは1文字の速度を遅くするのではなく、
文字と文字の間隔を広くとってあげて話しませんか?
(テープレコーダーの遅回しのような発音なら逆に聞き取れませんよね?)
モールスも言葉です。習得も乳幼児の会話習得のソレと同じです。


第一段階
出来上がったWAVを130〜150字の速度で再生します。
 
このとき必ず書いて下さい。
 ピー ピー ピ ピー ピー と音が来ますので、すかさず紙にアと書きます。
(あえて↑↓  ツー ツー ト ツー ツー  とは表現しません! 短点も長点も同じ音だからです)
このピー ピー ピ ピー ピーという音はアだと手が勝手に動くようになるまで、
同一文字を繰り返します。 パブロフの犬になるまで繰り返します。
 5文字新しい文字を覚えたところで、ランダムにその5文字が流れてきます。
音色の違いがわかる筈です。 音がきたらすかざす書きます。
 ここで符号の混同があるようだと、まだパブロフの犬になりきってません。
符号暗記にもどってやりなおします。

第二段階
一通り全符号を覚えたら、 全符号のランダム文を練習します。
このときは文字と文字の間隔をスペース3〜6つ分程度空けてください。
またランダム文も、自分の弱い文字、似通った文字をより多く取り混ぜるとよいでしょう。
(和文の場合の濁点、半濁点はどの文字にかかってもかまいません、
 濁点は濁点だけ、半濁点は半濁点だけで練習しましょう。)

第三段階
第二段階を終了したら、文字と文字の間隔を徐々にへらしていきます。
また濁点半濁点は正規化してください(濁点、半濁点のつく文字は限られますよね)
ここで最終的に文字と文字の間隔がゼロになれば卒業です。
(最後の空白一文字→空白無しに移る段階が一番つらいですが、頑張りましょう)
 また同時に試験は書いて何ぼですので、早く書く練習も合わせて行います。
モールスの受信とは別に、A〜Zまで、その逆などストップウォッチで計りながら
書く練習を積んでください。
アルファベットの順次筆記で、5分間に700字以上 書けるように練習を積んでください。
 練習を積むことにより書体が変化してくるはずです。
間違われそうな文字は他人が(試験官が)わかる範囲でアレンジしてかまいません。
 私は小文字筆記体をベースに小文字ブロック体をMIXした書体を使いましたが、
 皆さんの書きやすい文字でかまいません。
また、後述していますが、和文の数字・・・わざわざ漢数字で書く必要はありません!
普段使い慣れた、書きやすいアラビア数字で書きましょう。
 特に四や五などは(符号の速度より)書字に時間が掛かります。
また、漢数字の二 七 八 は それぞれ カタカナの ニ ヒセ ハ とよく間違われます。
本人が読めても試験官が正しく読めなければ、それは誤字です。
そんなリスクを減らす為にも アラビア数字で書きましょう。


路上
国家試験は「額表」という電報形式での試験です。
この額表の形式で平文の練習に入ります。英字新聞や天声人語などをWAVにして
書き取る練習をします。
後述しますが、これは普通文の雰囲気に慣れるためであって、意味を理解する必要は
まったくありません、正しく書き取れればよいのです。
 卒検として、試験のテープを聞いてみましょう
   あれまぁ〜なんと遅いことでしょう


もう一つのヒント
試験の為のモールス受信は、モールス筆記マシンに徹することです!
通信士の試験は、受信して紙に書いて初めて点数となります。
 なまじっかアマチュアでCW交信を趣んでいる方に限って合格率が悪いのもこの為です。
  アマチュアの実交信では書く習慣がないから。
送られてくる電文が、どんな内容だか、一切理解する必要はありません!
また、理解しようとしてもいけないのです。
 理解できるのであれば、それに越したことはありませんが、
理解しようとすると、その理解する為に、脳味噌のパワーを食われてしまい、
受信が疎かになり、点数が下がることは間違いない事実です。
 なまじっかアマチュアでCW交信を趣んでいる方に限って合格率が悪いのもこの為です。
  アマチュアの実交信では電文内容を理解してようやく意志の疎通
 その習慣で・・・理解しようとしてしまうから。


普通語を受信していて、間違いに気がついたことはありませんか??
 間違いに気がついてはいけないのです!
間違いに気がつくということは、とりも直さず、文章(単語)として受信している証拠であり、
受信しながら「既に受信したことまで」気にかけている証拠でもあります。

また 欧文暗語は点数がよく、欧文普通語はベロベロじゃないですか?
欧文暗語も欧文普通語も和文(1,2総通)も同じ速度です。
同じ速度?誤解があるかもしれないので、補足すると、どれも短点の長さは同じです。
つまりPARIS速度は同じなのです。 同じなのになんで受信できないのでしょう??
それは・・・文章として取ろうとしているからです。
文章として受信してはいけないのです。意味を理解しようとしてはいけないのです。
 ほうら その証拠が、欧文暗語と欧文普通語の点数の差です。


普段の練習などで THときたらか 次はISか? ATか? Eか?等と
単語で受信しようとしていませんか?
よく使われる単語100語(THE THIS WHAT・・・)とか覚えようとしていませんか?
重要事項なので何度も言いますが、英語(日本語)として受信してはいけないのです!
 単語として理解してもいけないのです!

繰り返しますが、筆記マシンになりきることです。

これはプロの仕事 電報業務でも同じです。 理解してはいけないのです!
例えば送られてきた電文が「コンニチホ」だったとします。
 これを間違いじゃない?って「コンニチハ」に自己修正してはいけないのです。
これは「コンニチホ」のホは電報送り主から受取人に対する意図だからです。
つまりプロは筆記マシンでなくてはいけないのです。 理解≒勝手な解釈 してはいけないのです。
 これがアマチュアとの大きな違いです。


これらは、アマチュアの実交信には役に立たないことでしょう。
  はっきり言って全く役に立ちません。
しかしながら、試験に合格することが目標であれば、
この手法はかなりの近道になることでしょう。
 ここに紹介した方法は、強制する訳では全くありません。
また、この方法が万人に最適とも限りません。
通信士の試験の最大の難関、モールスの受信の制覇に
少しでもお役に立てれば幸いです。
 受験者のみなさん、モールスは頭で考えるものではなく、体で覚えるもの
パブロフの犬になることです。 壁に突き当たることも多々あるでしょう、
それを乗り越え日々欠かさず練習すること以外には道はありません!
 そしてその練習が成果を結ばない筈もありません。
受験者の皆さんの二文字を心よりお祈り致しております。











☆23☆(2006年)





追記

国家試験の電気通信術(モールス)の採点基準を知らずにお受験する
無謀なチャレンジャーが多いため、ここに採点基準を掲載しておきます。
(アマチュアのモールス試験が簡略化される前の総務省通達基準ですが、
モールスの採点基準には変更が無い筈です、が、自己責任でご活用ください。)
現在の日無のHPでは肝心なところが※隠蔽 されているため詳細がわかりません。
採点基準表



採点基準を要約すると(モールスの部分)
1 和文普通語、欧文普通語、欧文暗語の3科目の合計点が 210点以上(3総通は190点以上)
 かつそれぞれが30点以上であること。
  つまり、例えば和文が30点でも 欧文暗語で100点、欧文普通語で80点を取れば合格です。

↓ここから先の部分が現在日無のHPで確認できる採点基準では隠蔽されている部分になります。

2 書き取る書体については一切制限がない。
  具体的には 大文字、小文字、筆記体やブロック体が混ざっても減点の対象にはしない
3 採点基準の最後に 不問の取り扱い があります。
  つまりこれらに該当している部分は減点の対象には当たらない・・・ ということです。
  具体的には 和文でアラビア数字を使おうが、ひらがなで(漢字で)書こうが
   はてまた縦に書こうが、横に書こうが←どうやって書くんだろう?(笑)
    減点の対象にはしない。ということです。
4 同じく不問の取り扱いですが、ここにあるように ハツやタナを書いたりNRを書いたりしても
   これも減点の対象にはしない。ということです。
5 それ以外にもページ捲りに必要な空ける間隔なども細かく規定があり、この採点基準で採点されます。

自己責任において採点基準をきちんと理解して、万全でお受験に望みましょう。
 正しい採点基準を知らないから、ゴシック体と筆記体を混ぜると減点だとか・・・、
和文は漢数字で書かないといけないだとか・・・、ハツやタナを書くと減点だとか・・・。
 都市伝説が生まれるんだろうな〜。
ぎりぎりで合格しても、満点で合格しても 資格の価値は同じです。



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